いい批評ってかっこいいもの、思考を澄みわたらせ、生きているよろこびを与えてくれるからね。そんな5冊を紹介しましょう。『反逆の群像ー批評とは何か』は批評家三十名余りを章ごとに紹介批評してゆく書評本で、同時に、批評の通史にもなっていながら、しかも強烈にイーグルトン色の出ている本。文学批評本、今年最高の収穫。
『英文学への挑戦』は、1980年以降の〈英文学から英語文学へ〉という(ブッカー賞がリードする)流れをまなじりに押さえつつ、優れた文学教師の情熱ほどばしる啓蒙の書。
『日本語が亡びるとき』は、対照的におさえきれないほどの近代文学への愛ゆえに、ポストモダニズムとポストコロニアリズムのなかで、各国近代文学が没落し、ただ英語文学のみが隆盛する現在を嘆く、エレジーであり、著者の『私小説 FROM LEFT TO RIGHT』の系譜にも属している。論旨に独創性はないが、ただし私小説として泣ける。
『小説の設計図(メカニクス)』、ねぇ、批評って超おもしろくて、かっこいいもんだよねぇ。
『喪失の響き』はもしも近代文学として読んだならとりとめなく雑然とした凡作ならが、しかしこの作品にふさわしく、現代の(ポストコロニアルな、そしてグローバリゼーションの吹き荒れる)現代の文学として読んだなら、可能性が感じられる、野心的で規範的かつチャーミングな一作。
あっ、忘れてた、中井亜佐子著『他者の自伝 ポストコロニアル文学を読む』研究社もすばらしいなぁ、これも必読。