「本能寺の変の真相はこうだ」というような歴史ミステリーは沢山の本に取り上げられているが、「うつろ舟事件の真相を追え」というような本は、おそらくこの本が初めてではないかと思う。
既存の本がよくないなどというわけではない。それぞれが限られたスペースの中でベストを尽くしている。私は何も他の本を貶めて、この本をその上に据えてすすめたいわけではない。むしろ今までの本がとりあげなかったからこそ、この本が出てきたことに意味があるとも言えるだろう。
はるか昔の江戸時代、常陸国に「うつろ舟」なる乗り物がやってきたという話が伝わっている。それを伝える絵にある「うつろ舟」の形が現代に生きる我々にUFO(未確認飛行物体)を思わせるものであるがために、
「これは江戸時代にやってきたUFOでは?」
と扱われたりしてきた。
念のために言っておくと、これらは「現代に作られたニセの古文書」ではない。江戸時代の人たちによって書かれたことは事実である。だからこれは真面目な歴史ミステリーなのだ。
絵というものは映像とか写真と違って想像力をかきたてられてしまう。今日のようにUFO写真もUFO番組もないであろう江戸時代の人たちが、いったいどうしてこれを書いたのだろう。
こうであってほしい、こうに違いない、そういった予測や願望は捨ててほしい。本を読むということは、あらかじめ思い描いた願望への到達を目指すだけでは面白くない。むしろ先が見えない道を進む気分で読む方がいい。登山にて先に何があるかわからぬ道を進むことは遭難を防ぐために慎むべきだが、本を読んで遭難することはないのだ。