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さまよう刃【読者投稿ブックレビュー】

素晴らしく面白いが、砂をかむようなとは正にこのことと感じる読後感

東野圭吾
角川文庫

東京都立大学OBさんのおすすめブックレビュー
2009年09月30日掲載

テーマは全く異なるが、ジョン・グリシャム作「評決のとき」と、題材がほぼ一緒であることに興味を覚え手に取った。

一気に読んだ。
価値観、社会への繋がりなど全く異なる登場人部の個性が浮き彫りにされ、その彼らが重いテーマにそれぞれの立場で関わっていく様と、子を持つ親である私自身を主人公にどうしても重ねてしまうことで、読む事を止められない。

でも、何だこの読後感の後味の悪さは。正に砂をかむとはこのような感覚だ。法律の存在とは何か、正義とは何か、倫理観の欠如や利己主義、社会システムそのもののひずみ、そういった成熟した現代社会における根源的な問いかけをシャワーのように浴びせられる。しかし、読者である私は一方的に浴びるのみで、一片の解決を垣間見ることなく物語りは終わる。しかもレイプ殺人と復讐という題材だ。

読む者を引き付けて止まないというプラスの素晴らしさと、その絶対量分の読後感の悪さという負の要素。正負いずれにしても、その振幅の絶対値は大きく、傑作なのだろう。

当分この作家の作品を読む気にはなれない。されど、私の感情の揺れが収まる頃、間違いなく手に取る予感はする。

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