神戸/続神戸/俳愚伝
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著
西東三鬼
講談社
/講談社文芸文庫
[小説]
国内
2000.05 版型:文庫 ISBN:4061982125
価格:1,365円(税込)
“東京の何もかも”から脱出した“私”は、神戸のトーアロードにある朱色のハキダメホテルの住人となった。第二次世界大戦下の激動の時代に、神戸に実在した雑多な人種が集まる“国際ホテル”と、山手の異人館〈三鬼館〉での何とも不思議なペーソス溢れる人間模様を描く「神戸」「続神戸」。自ら身を投じた昭和俳句の動静を綴る「俳愚伝」。コスモポリタン三鬼のダンディズムと詩情漂う自伝的作品3篇。
おすすめ本書評
- 下り坂のコスモポリタン
毎年、1月17日が近づいてくると、アタマの中に「神戸」という単語が去来する。別に自分自身があの阪神・淡路大震災に
直面したわけではないけれど(妹夫婦は西宮市で被災した)、それでもこの国の多くの人々の記憶の中に、「1.17」が厳然と
刻まれているのは間違いないだろう。
同時に、もう一つの「神戸」に連想を飛ばすのも、これまた毎年の常である。それは、素っ気なくもしかしそれ以外のタイ
トルでは決してありえないような美しい小説『神戸』のことだ。作者は西東三鬼。サイトウサンキ、と読む。俳人である。
小説としては『神戸』とその続編である『続神戸』の二編を遺したのみだから、誰も三鬼を小説家と呼ぶ人はいない。いない
が『神戸』は、先の戦争を経由した、戦後文学のとっておきのスゴ玉なのである。
北條一浩
2011/01/19掲載
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