月と雷
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著
角田光代
国内
2012.07 版型:単行本 ISBN:4120043991
価格:1,470円(税込)
おすすめ本書評
- 波紋上等
東原智はモテる男だ。34歳になる今まで交際相手に困ったことがない。しかし関係を持続させる力には欠けている。最近も結婚話を持ちかけようと思っていた女性から別れを切り出された。その女性曰く、その理由は「ヒモみたいに暮らしているから」ではなく、「ふつうのことがふつうにできなくて怖いから」。
彼女の言葉の意味を考えながら、智はそれが自分の生い立ちのせいなのではないかと思う。母直子は男がいないと精神的にも経済的にも生きられない。家に泊めてくれると言う男についていき、一緒に暮らし始める。そしてある日、智を連れてふらりと出て行く。それを繰り返してきた。その癖は60歳を過ぎた今も治らない。
智は生い立ちを振り返りながら、泰子ちゃんを思い出す。泰子とその父親の家に、智と直子は一時期転がり込んでいた。当時小学生だった智と泰子は学校にも行かず、じゃれあって遊んで過ごしていたのだ。あの頃が人生で一番楽しかったと思い出に浸りながら、智はふと思う。
長坂陽子
2012/07/30掲載
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