男
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著
柳美里
新潮社
/新潮文庫
[小説]
国内
2002.07 版型:文庫 ISBN:9784101229232
価格:460円(税込)
時に私を愛し、時に私を壊して去っていった男たちの「からだ」を思い出す。彼とセックスをすると、自分が浄められ、生まれたばかりの瞬間に戻っていくような気がした。爪を切った直後に別れた男がいた。ひとりだけ、朝いっしょに風呂に入って、からだの隅々まで洗ってやった男がいた。今、せつない記憶の数々が鮮やかに蘇る。とてもエロティック、でも、とびきり純粋な性と愛の物語。
目—目は男が放った怨念の矢であるかのようにときどきわたしを金縛りにする。;
耳—「わたしの顔のどこが好き」と女に訊ねられて、「耳」と答える男はまずいないだろう。;
爪—爪を切った直後に別れた男がいる。;
尻—頽廃と軽薄は美しい肉体に宿る。;
唇—でもなぜだろう、キスをすればするほど不安に襲われるのは?;
肩—ときどき彼の肩はわたしの目の前にぽっかりと、救命うきわのように浮かぶ。;
腕—腕枕、腕を組んで歩く、腕は男のからだのなかでもっとも幸福なイメージが湧く場所だ。;
指—彼らの指は十歳以前のわたしの性器に触れたことをおぼえているだろうか。;
髪—フランス語では髪(CHEVEUシュヴュ)は男性名詞なのだそうだ。;
頬—お姉ちゃんは猫のような仕種で伸びをしてパパの頬に頬ずりをする。〔ほか〕
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