子どもの頃、だれもが一度は手にし、遊んだことがあるどんぐり。
まるいの、細長いの、大きいの、小さいのと、たくさん集めて、宝物のようにしていた方も多いのではないだろうか。
そして親になった時、おさな子といっしょにどんぐりを拾って遊ぶという経験をだれもが持つであろう。
そんなどんぐりを主人公にした絵本の名作をご紹介したい。
コウくんはどんぐりが大好きな幼稚園生。なかでも丸くて大きなどんぐりを「ケーキ」と名づけて、とっても大事にしている。
たくさんあるどんぐりの仲間のなかから、コウくんは必ず「ケーキ」を見つける。なぜなら、そのどんぐりのおしりには「ケーキ」と書いてあるから。
コウくんはいつも「ケーキ」といっしょ。坂をころがってかけっこをしたり、ビニールプールでおよいだり。
でもそんななかよしのコウくんとどんぐりの「ケーキ」に、とつぜんの別れがやってくる。
コウくんが森でどんぐり拾いに夢中になるあまり、大切な「ケーキ」を落としてしまったのだ。泣きながら「ケーキ」を必死にさがすコウくん。見つけてもらおうと落ち葉をはねのけ、懸命にもがく「ケーキ」。でも捜索はむなしく終了してしまう。
コウくんはやがて「ケーキ」の存在を忘れてしまう。でも「ケーキ」はりっぱなどんぐりの木となり、小学生のコウくん、中学生のコウくんと、最愛の友の成長を見守り続ける。
森が宅地に変わり、家やビルが立ち並び、「ケーキ」のところから、コウくんの家も通学路もみえなくなってしまう。それでもコウくんのことを思い続ける「ケーキ」。
そんなある日、大きくなった二人にとって、とてもうれしいできごとが起こるのである。
小さなどんぐりと男の子の友情を、これほどまでにあたたかく、感動的に描いた作品に、筆者は何度目頭を熱くしたことであろうか。
本稿を執筆するため、再度読み直した際も、また涙、涙。
それぞれの世界を生きながらも、時の流れを越え、つながっていた愛を見事に描いた本書。お父さん、お母さんは、子どもたちにぜひ読んであげてほしい。
読み聞かせしながら、感動で声を詰まらそうになってもどうかやめずに涙声で続けてほしい。きっとあなたと作者の思いが、子どもたちにも伝わるであろうから。