連作小説の第一作目を読んで、こりゃいいな、しばらくこの主人公とつきあおうと決めたあとの第二作がこの本。一作目のワクワクが続いて、楽しめた。
もともと、この文庫本の表紙を見て良さそうだなぁと思ったのが発端。手にとって見てこれがシリーズの二作目だと知って、まずシリーズの一から読むことにしたといういきさつがあった。その一作目が紹介済みの『密封』です。この感じからすると「漢字二文字で、密封、国禁、というように続ける気なのかな」と思ったりもする。ディック・フランシスの有名な競馬シリーズが漢字二文字シリーズのはず。
昨今、文庫本には帯が回してあって、カバー・デザインの三分の一は帯で隠れてしまう。この文庫本の帯には「幕府の根幹を揺るがす鎖国の禁を破る者とは? 敵を斬る!謎を断つ!文庫書下ろし時代小説 早くも大注目のシリーズ第二弾!」とある。
なんと、本を読み終えてから初めて気づいた。
書店で「お、シンプルだけどいいカバーだな。この本、良さそうだなぁ」と感じたときには、一文字も読んでいなかった。申しわけないが、気づきかなかった。
読む前に「鎖国の禁を破る者とは?」というヒントを与えてはいけないでしょう。この本の書名『国禁』というのは何だろう、と思いながら本に入って行くんだもの。
それよりカバーのイラストレーションに、刀を抜こうと構えている若い侍と、座り机の上の帳面に向かっているやや年配の侍が描かれている方に目がいった。若い侍が柊衛悟(ひいらぎえいご)、年配の方が奥右筆の立花併右衛門と、すでにシリーズ一作目を読んでいる私にはわかっている。この二人が一組で主役と言っていいのだろうが、今のところ奥右筆で主人公である立花の存在感が大きい。
本は、あまり広告費をかけることができない「商品」のようで、新聞で今月の新刊として広告する以外に、書店の店頭で「その本自身に広告させよう」というのが帯なんだろうと私は思っている。
しかしなぁ、文庫のカバーイラストレーションを描くイラストレーター、あるいは写真を提供するフォトグラファーが気の毒になることがある。デザインの三分の一が隠されてしまうんだもの。文庫カバー・オブ・ジ・イヤーなんて賞でも創って、もっとデザインに目がいくようにし、評価したい気がする。
さて、本のレビュー。
この小説は将軍家斉の時代が舞台で、そろそろ幕藩体制が崩れ始めてきた時期。いや、既にかなり崩れつつある時期、か。各藩の財政が傾いて、民が疲弊しているといった経済状況。その中で、津軽藩から出された書類を見て、奥右筆の立花が「おや?」と思う。
津軽藩の石高を見直して、上方修正して欲しいという書類なのだ。藩の石高を見直し、これまでより収入が増えているとなれば、幕府がその藩に「公共工事など」を押しつけたり、江戸城の修理を担当しろと言いつけたりして、その裕福な分を削ってしまおうとする策をとるのが普通だ。そういわれることがわかっていて、しかも日本中の藩が商人に金を借りてなんとか藩を持たしているといっていい時期に、我が藩の石高を見直して欲しいという書類が提出されている。
「石高が増えたって黙っていればいいではないか」、どこだってそうしているだろうに、津軽藩はなぜこんなことをする? 魂胆はどこにある? というのがこの「国禁」の始まり。
既に、本に回してある帯を読んでしまっていれば、鎖国の禁を破ることだとわかるので、津軽藩は北の海でロシアと密貿易をしているな、と推察する。それが事件の始まりということだな、と推測できる。