1866年、テキサス。南北戦争が終結した翌年のこと。夫カークと兄弟を戦争で失ったメグは、町でただ一人、兵役拒否をして、戦地から生きて戻ってきたクレイに、行き場のない憎しみを抱えていた。なぜ南軍のために闘った愛する夫たちは死に、臆病者が生き残るのだ? 彼女は、クレイに罪を自覚させる方法を思いつく。もともとクレイの一家は、牧場経営の傍ら、墓石を刻む仕事を引き受けていた。クレイに戦死した村の若者たちの像を彫らせるのだ。
だが、憎しみも露わに近づいたメグに、クレイは優しかった。メグは、自分を実の孫のようにかわいがってくれているカークの祖母にアリバイ作りを頼み、クレイと二人、像のための石を買い付ける旅に出る。不思議なことに、カークの祖母はクレイのことをよく知っているようで、町中のものが彼のことを軽蔑し、嫌っているにもかかわらず、祖母は好意を抱いているようだった。
旅をするうちに、メグはクレイがナイフの名手で、暴漢に立ち向かう勇気の持ち主であり、戦没した若者22人の名前をすべて記憶していることを知る。なのになぜ兵役を拒否し、さらには憎まれているとわかっているこの町に帰ってきたのか。
多くを語らず、旅から戻ってからは、黙々と石にのみを穿ち続けるクレイのたくましく孤独な背中を見つめながら、メグはだんだん彼のことを憎くなくなってきている自分に気づく。憎くないどころか……
一方クレイは、親しい友人だったカークの妻に、少女のころから好ましい思いを抱いていた。そして成長した彼女は、美しい青い目の印象的な、忍冬の匂いのする大人の女性へと変貌していた。そのすべてが痛いほど彼を魅了した。
しかし、奴隷制度をよしと思わず、かといって故郷の仲間を裏切ることもできず、兵役を拒否したことが、町の人々を怒らせ、彼と彼の家族である幼い弟たちを町から孤立させていた。弟たちのために町に帰ってきはしたが、自分が近づくことで、メグも村八分のめに遭わせてしまうかもしれない。像が完成したら、村を出るべきなのか。
クレイが思い悩みながらかつてカークたち仲間と共に語り合った秘密の泉に赴くと、そこには同じように思い悩み水浴びに来ていたメグの姿が。ふたりは磁力のように引き寄せられて……
南北戦争が残した傷痕を、夫を戦争で失った未亡人と、兵役拒否をしたことで村八分にされる青年の恋愛を通して描く、かなりシリアスなロマンスです。
メグの抱える哀しみと憎しみ、クレイの抱える深い孤独と信念が、とても丹念に描かれていて、歴史的な背景はもちろん、それぞれの家族との関係なども話に複雑に絡み合い、この話を深みのある作品にしています。
町で人々から距離を取るクレイの姿の、その孤独な世界に、メグが胸を痛め、どうしたらそこに入ることができるのか苦悩するさまなどは、涙を誘う場面です。
メグはまず、自分自身の偏見と闘い、さらにクレイと共に、町の人々の偏見に立ち向かっていきます。
クレイの双子の幼い弟などがとても可愛らしく、メグにお菓子をねだったりするところなど、心和むシーンも随所に挿入されています。
深い感動を求める人に薦めたい作品です。☆☆☆☆☆
シリアス度☆☆☆☆☆
ウェスタンの魅力度☆☆☆
とてもおすすめ | ☆☆☆☆☆ |
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おすすめ | ☆☆☆☆ |
まあまあ | ☆☆☆ |
あまりおすすめできない | ☆☆ |
これは困った | ☆ |