書評の楽しみを考える Book Japan

 
 
 
トップページ > B.J.インタビュー > vol.2 第15回日本ホラー小説大賞長編賞受賞 選考会史上、異例の物議を醸した衝撃のグチョエンタ作品、飴村行『粘膜人間』

第15回日本ホラー小説大賞長編賞受賞
選考会史上、異例の物議を醸した衝撃のグチョエンタ作品、飴村行『粘膜人間』

『粘膜人間』 飴村行

グッチャネって何だ?

――(以下、杉江松恋)飴村さん、このたびは『粘膜人間』(応募時のタイトルは『粘膜人間の見る夢』)の第15回(2008年)日本ホラー小説大賞長編賞受賞おめでとうございます。たいへん、おもしろく読ませていただきました。正直言って私、新人作家の小説を二日間で二度も読み返したのは初めてです。そのぐらいおもしろかった。

飴村 ありがとうございます。

――授賞式で「グッチョングッチョンの小説だ」という趣旨のことをおっしゃったではないですか。なんじゃそら、と思って読み始めたら、もうその挨拶と寸分違わぬグッチョングッチョンさで。……素晴らしかったです。

飴村 光栄です(笑)。

――えーと、読者の方にお断りしておいた方がいいと思うのですが、これはひどい話ですからね。グッチョングッチョンの首ちょんぱですから。でも言葉の感覚がとても楽しい話です。陰惨な話だけど、用語に遊びがあるので暗い気持ちにならずに読むことができる。これは遠藤徹さんの(第10回・2003年)同賞の大賞受賞作である『姉飼』(角川ホラー文庫)を読んだときにも思ったのですけど、グロテスクな描写がある小説だからといって、言葉がただ汚いだけではだめなんですよね。そういう小説だからこそ、ファンタジックな要素があれば映える。

飴村 ありがとうございます。

――でもね、冒頭でいきなり「しこる」なんて言葉が出てきたのにはびっくりしましたよ。日本ホラー小説大賞史上初めて「しこる」と書いた作家ですね、飴村さんは。というか私、しこるという言葉自体、一般の小説で読んだことがないです(笑)。

飴村 はは……、申し訳ないです。

――なんですか、この文章は(朗読する)「グッチャネって何だ?」「女の股ぐら泉に男のマラボウを入れてソクソクすることだっ」。女のマタグライズミ……。

飴村 あ、それはマタグラセンと読んでください。

――マタグラセン!(笑)。あの、グッチャネというのは方言(飴村さんは福島のご出身)ですか?

飴村 それは違うんです。ちょっと長くなるけど、いいですか? 大学時代の後輩にベカやんという人物がいたんですよ。登場人物にも出てきますが、同じあだ名です。そのベカやんが夢を見たんです。彼がロックスターになっていて、武道館で一万人を前に歌う夢だったそうで、そのときの曲名が「グッチャネフリーダム」。

――なんじゃそりゃ!

飴村 強烈に頭に残っていたもので、使ってみました。

――ベカやんはそういう人なんですか?(どういう人なのかは『粘膜人間』を読もう!)

飴村 いいえ全然違います! これは本人の名誉のために言っておきます。

――なるほど。受賞のことばに書かれていましたが、この作品は飴村さんが見た夢のイメージから出発しているそうですね。河童の生首が道に転がっているという。なにかそれ以外に、夢のイメージから生まれた場面などはありますか?

飴村 無意識のうちに昔見た夢のイメージを入れた可能性はありますが、特別に意識はしていません。

粘膜人間
飴村行
角川書店角川ホラー文庫SF・ホラー] 国内
2008.10  版型:文庫
価格:540円(税込)
「弟を殺そう」――身長195cm、体重105kgという異形な巨体を持つ小学生の雷太。その暴力に脅える長兄の利一と次兄の祐二は、弟の殺害を計画した。だが圧倒的な体力差に為すすべもない二人は、父親までも蹂躙されるにいたり、村のはずれに棲むある男たちに依頼することにした。グロテスクな容貌を持つ彼らは何者なのか? そして待ち受ける凄絶な運命とは……。第15回日本ホラー小説大賞長編賞を受賞した衝撃の問題作。
>>書評を読む  >>詳細を見る

boopleで検索する

お探しの書籍が見つからない場合は、boopleの検索もご利用ください。Book Japan経由でのご購入の場合、Book Japanポイントをプラスしたboopleポイントを付与させていただきます。

booplesearch


注目の新刊

Sex
石田衣良
>>詳細を見る
失恋延長戦
山本幸久
>>詳細を見る
自白─刑事・土門功太朗
乃南アサ
>>詳細を見る
ガモウ戦記
西木正明
>>詳細を見る
怨み返し
弐藤水流
>>詳細を見る
闇の中に光を見いだす─貧困・自殺の現場から
清水康之湯浅誠
>>詳細を見る
すっぴん魂大全紅饅頭
室井滋
>>詳細を見る
すっぴん魂大全白饅頭
室井滋
>>詳細を見る
TRUCK & TROLL
森博嗣
>>詳細を見る
猫の目散歩
浅生ハルミン
>>詳細を見る
さすらう者たち
イーユン・リー
>>詳細を見る
猿の詩集 上
丸山健二
>>詳細を見る
ポルト・リガトの館
横尾忠則
>>詳細を見る
ボブ・ディランのルーツ・ミュージック
鈴木カツ
>>詳細を見る
カイエ・ソバージュ
中沢新一
>>詳細を見る
銀河に口笛
朱川湊人
>>詳細を見る
コトリトマラズ
栗田有起
>>詳細を見る
麗しき花実
乙川優三郎
>>詳細を見る
血戦
楡周平
>>詳細を見る
たかが服、されど服─ヨウジヤマモト論
鷲田清一
>>詳細を見る
冥談
京極夏彦
>>詳細を見る
落語を聴くなら古今亭志ん朝を聴こう
浜美雪
>>詳細を見る
落語を聴くなら春風亭昇太を聴こう
松田健次
>>詳細を見る
南の子供が夜いくところ
恒川光太郎
>>詳細を見る
星が吸う水
村田沙耶香
>>詳細を見る
コロヨシ!!
三崎亜記
>>詳細を見る
虚国
香納諒一
>>詳細を見る
螺旋
サンティアーゴ・パハーレス
>>詳細を見る
酒中日記
坪内祐三
>>詳細を見る
天国は水割りの味がする─東京スナック魅酒乱
都築響一
>>詳細を見る
水車館の殺人
綾辻行人
>>詳細を見る
美空ひばり 歌は海を越えて
平岡正明
>>詳細を見る
穴のあいたバケツ
甘糟りり子
>>詳細を見る
ケルベロス鋼鉄の猟犬
押井守
>>詳細を見る
白い花と鳥たちの祈り
河原千恵子
>>詳細を見る
エドナ・ウェブスターへの贈り物
リチャード・ブローティガン
>>詳細を見る
人は愛するに足り、真心は信ずるに足る
中村哲澤地久枝
>>詳細を見る
この世は二人組ではできあがらない
山崎ナオコーラ
>>詳細を見る
ナニカアル
桐野夏生
>>詳細を見る
逆に14歳
前田司郎
>>詳細を見る
地上で最も巨大な死骸
飯塚朝美
>>詳細を見る
考えない人
宮沢章夫
>>詳細を見る
シンメトリーの地図帳
マーカス・デュ・ソートイ
>>詳細を見る
身体の文学史
養老孟司
>>詳細を見る
岸辺の旅
湯本香樹実
>>詳細を見る
蝦蟇倉市事件 2
秋月涼介、著 米澤穂信など
>>詳細を見る
うさぎ幻化行
北森鴻
>>詳細を見る

Internet Explorerをご利用の場合はバージョン6以上でご覧ください。
お知らせイベントBook Japanについてプライバシーポリシーお問い合わせ
copyright © bookjapan.jp All Rights Reserved.