書評の楽しみを考える Book Japan

 
 
 
トップページ > B.J.インタビュー > vol.1 2008年、驚異の4冠達成!! 期待の最多賞新人・真藤順丈、登場!!

2008年、驚異の4冠達成!!
期待の最多賞新人・真藤順丈、登場!!

作家の中で渦巻くカオス

――応募される前、ダ・ヴィンチ文学賞にはどういう印象を持っておられたんですか?

真藤 以前の受賞作はあまり意識しなかったです。僕が雑誌の「ダ・ヴィンチ」に持っているイメージは、地図男の地図帳じゃないけど、物語がいっぱい詰っているカタログのようなものですね。だから『地図男』という作品を応募するのは面白いんじゃないかと。

――あ、なるほど。ダ・ヴィンチ文学賞は真藤さん以前には全然違う方向の作品が受賞していたんですが、『地図男』が出てきたことによって今後の流れができたという気もします。来年度の応募作がちょっと楽しみですね。また『庵堂三兄弟の聖職』の話になりますが、あの作品もこれまでの日本ホラー小説大賞とは傾向が違います。『庵堂三兄弟』はファミリーコメディの要素が強いですよね、実は。

真藤 そうですね。ホラーの土壌からスタートしてはいるんですけど、『庵堂三兄弟』では人物を掘り下げて書きたいという気持ちがありましたから、必然的にビルドゥングスロマンのような、成長小説の要素が強くなりました。あれは常識が反転していて、非常識が常識であるような世界なのですが、その中に現実世界の人間と同じような葛藤を持っていたり、気持ちの揺れがあったりする人物がいる。そのバランスをしっかりとっていけば、表層的にはホラーで、中身はホラー+成長物語という多層的な構造をもてるのではないかと思ったんです。

――日常の中にマジカルなものが同居している不思議なお話ですよね。これまでの受賞作で言えば、私は遠藤徹さんの『姉飼』(角川ホラー文庫)がいちばん近い匂いがするな、と思っていました。おもしろいのは、『地図男』にも『庵堂三兄弟』にも自罰体質というか、自傷行為をする人物が出てくるでしょう。あれは、真藤さんの中の不安定な部分が出ているのか、それとも今の若い人たちの気持ちを代弁するような感覚で書かれているのか、興味があります。

真藤 そうなんです。なんか出てくるんですよ、自傷癖のある人たちが。この二作は、まさか同時に世に出るとは思わずに書いていたものなので、人物の色づけとして似たような要素を設定してしまったという面はあります。たぶん、僕は衝動を書きたいんですよ。

――衝動ですか。

真藤 はい。衝動が抑えきれない。あふれ出しそうで、それを抑えられないという人を書きたいんです。自傷というのは、閉じている自分の蓋を開けるということのメタファーで、衝動の歪んだ表現としてそういうものが出てしまうのだと思います。決して自分に自傷癖があるというわけではないです。

――そうか。内部から噴出してくるイメージなんですね。さっき文章のリズムの話をしたけど、そういうことも含めて衝動なんでしょうね。真藤さんの中で出てきているものを言語化するとき、それが噴出してしまうようなことがあるんじゃないのかな。それが文章に自然な形で現れているという気がします。もしかして何か音楽をやっておられたとか?

真藤 いえ、それが何も。外見からよくそう言われるんですけどね(笑)。


boopleで検索する

お探しの書籍が見つからない場合は、boopleの検索もご利用ください。Book Japan経由でのご購入の場合、Book Japanポイントをプラスしたboopleポイントを付与させていただきます。

booplesearch


注目の新刊

Sex
石田衣良
>>詳細を見る
失恋延長戦
山本幸久
>>詳細を見る
自白─刑事・土門功太朗
乃南アサ
>>詳細を見る
ガモウ戦記
西木正明
>>詳細を見る
怨み返し
弐藤水流
>>詳細を見る
闇の中に光を見いだす─貧困・自殺の現場から
清水康之湯浅誠
>>詳細を見る
すっぴん魂大全紅饅頭
室井滋
>>詳細を見る
すっぴん魂大全白饅頭
室井滋
>>詳細を見る
TRUCK & TROLL
森博嗣
>>詳細を見る
猫の目散歩
浅生ハルミン
>>詳細を見る
さすらう者たち
イーユン・リー
>>詳細を見る
猿の詩集 上
丸山健二
>>詳細を見る
ポルト・リガトの館
横尾忠則
>>詳細を見る
ボブ・ディランのルーツ・ミュージック
鈴木カツ
>>詳細を見る
カイエ・ソバージュ
中沢新一
>>詳細を見る
銀河に口笛
朱川湊人
>>詳細を見る
コトリトマラズ
栗田有起
>>詳細を見る
麗しき花実
乙川優三郎
>>詳細を見る
血戦
楡周平
>>詳細を見る
たかが服、されど服─ヨウジヤマモト論
鷲田清一
>>詳細を見る
冥談
京極夏彦
>>詳細を見る
落語を聴くなら古今亭志ん朝を聴こう
浜美雪
>>詳細を見る
落語を聴くなら春風亭昇太を聴こう
松田健次
>>詳細を見る
南の子供が夜いくところ
恒川光太郎
>>詳細を見る
星が吸う水
村田沙耶香
>>詳細を見る
コロヨシ!!
三崎亜記
>>詳細を見る
虚国
香納諒一
>>詳細を見る
螺旋
サンティアーゴ・パハーレス
>>詳細を見る
酒中日記
坪内祐三
>>詳細を見る
天国は水割りの味がする─東京スナック魅酒乱
都築響一
>>詳細を見る
水車館の殺人
綾辻行人
>>詳細を見る
美空ひばり 歌は海を越えて
平岡正明
>>詳細を見る
穴のあいたバケツ
甘糟りり子
>>詳細を見る
ケルベロス鋼鉄の猟犬
押井守
>>詳細を見る
白い花と鳥たちの祈り
河原千恵子
>>詳細を見る
エドナ・ウェブスターへの贈り物
リチャード・ブローティガン
>>詳細を見る
人は愛するに足り、真心は信ずるに足る
中村哲澤地久枝
>>詳細を見る
この世は二人組ではできあがらない
山崎ナオコーラ
>>詳細を見る
ナニカアル
桐野夏生
>>詳細を見る
逆に14歳
前田司郎
>>詳細を見る
地上で最も巨大な死骸
飯塚朝美
>>詳細を見る
考えない人
宮沢章夫
>>詳細を見る
シンメトリーの地図帳
マーカス・デュ・ソートイ
>>詳細を見る
身体の文学史
養老孟司
>>詳細を見る
岸辺の旅
湯本香樹実
>>詳細を見る
蝦蟇倉市事件 2
秋月涼介、著 米澤穂信など
>>詳細を見る
うさぎ幻化行
北森鴻
>>詳細を見る

Internet Explorerをご利用の場合はバージョン6以上でご覧ください。
お知らせイベントBook Japanについてプライバシーポリシーお問い合わせ
copyright © bookjapan.jp All Rights Reserved.