B.J.インタビュー vol.1 by Sugie McKoy 2008/10/9(株)メディアファクトリー ダ・ヴィンチ編集部にて
――応募される前、ダ・ヴィンチ文学賞にはどういう印象を持っておられたんですか?
真藤 以前の受賞作はあまり意識しなかったです。僕が雑誌の「ダ・ヴィンチ」に持っているイメージは、地図男の地図帳じゃないけど、物語がいっぱい詰っているカタログのようなものですね。だから『地図男』という作品を応募するのは面白いんじゃないかと。
――あ、なるほど。ダ・ヴィンチ文学賞は真藤さん以前には全然違う方向の作品が受賞していたんですが、『地図男』が出てきたことによって今後の流れができたという気もします。来年度の応募作がちょっと楽しみですね。また『庵堂三兄弟の聖職』の話になりますが、あの作品もこれまでの日本ホラー小説大賞とは傾向が違います。『庵堂三兄弟』はファミリーコメディの要素が強いですよね、実は。
真藤 そうですね。ホラーの土壌からスタートしてはいるんですけど、『庵堂三兄弟』では人物を掘り下げて書きたいという気持ちがありましたから、必然的にビルドゥングスロマンのような、成長小説の要素が強くなりました。あれは常識が反転していて、非常識が常識であるような世界なのですが、その中に現実世界の人間と同じような葛藤を持っていたり、気持ちの揺れがあったりする人物がいる。そのバランスをしっかりとっていけば、表層的にはホラーで、中身はホラー+成長物語という多層的な構造をもてるのではないかと思ったんです。
――日常の中にマジカルなものが同居している不思議なお話ですよね。これまでの受賞作で言えば、私は遠藤徹さんの『姉飼』(角川ホラー文庫)がいちばん近い匂いがするな、と思っていました。おもしろいのは、『地図男』にも『庵堂三兄弟』にも自罰体質というか、自傷行為をする人物が出てくるでしょう。あれは、真藤さんの中の不安定な部分が出ているのか、それとも今の若い人たちの気持ちを代弁するような感覚で書かれているのか、興味があります。
真藤 そうなんです。なんか出てくるんですよ、自傷癖のある人たちが。この二作は、まさか同時に世に出るとは思わずに書いていたものなので、人物の色づけとして似たような要素を設定してしまったという面はあります。たぶん、僕は衝動を書きたいんですよ。
――衝動ですか。
真藤 はい。衝動が抑えきれない。あふれ出しそうで、それを抑えられないという人を書きたいんです。自傷というのは、閉じている自分の蓋を開けるということのメタファーで、衝動の歪んだ表現としてそういうものが出てしまうのだと思います。決して自分に自傷癖があるというわけではないです。
――そうか。内部から噴出してくるイメージなんですね。さっき文章のリズムの話をしたけど、そういうことも含めて衝動なんでしょうね。真藤さんの中で出てきているものを言語化するとき、それが噴出してしまうようなことがあるんじゃないのかな。それが文章に自然な形で現れているという気がします。もしかして何か音楽をやっておられたとか?
真藤 いえ、それが何も。外見からよくそう言われるんですけどね(笑)。
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