書評の楽しみを考える Book Japan

素敵な読書カフェめぐり神保町編の2回目は、隠れ家的な存在と美味しいコーヒーが人気の「珈琲舎 蔵」をご紹介します。1993年に店主の鈴木さんが務めていたコーヒー関連会社から昔からの夢をかなえて開店。大通りからは少し奥まった場所ながら、落ち着いた雰囲気の中で美味しいコーヒーが飲めるお店として好評で、通い詰める常連さんも多数。長年コーヒーにたずさわっていた店主のお店ですから、そのこだわりは並ではありません。香り高いコーヒーとともに、のんびりとした読書の贅沢な時間をお過ごしください。

神保町駅A5出口から、人々で賑わう靖国通りへ。andonandの先を左に入り、2つ目の角を右に曲がれば、表に出ている看板を見つけられます。少し場所が分かりにくいので、このページかホームページを控えておいた方が良いでしょう。一見、民家のようですが、2階への少し急な階段を上がれば到着です。時間にすれば、およそ5分ほど。
扉を開くと、まず手前に一枚板の大テーブル。この席は南向きの窓から日の光が射し込み、飾られている草花とテーブルが明るく照らされています。晴れた日の午後はこちらの席がおすすめ。左手にはテーブル席8席とカウンター席。このテーブル席にも小さな花が置かれています。全てのイスには座り心地の良い「蔵」と書かれた紺の座布団。1つ1つの小さな心遣いが、おもてなしの心を表しています。BGMはジャズ中心にしっとりと。店主・鈴木さんはジャズピアニストの大御所ビル・エヴァンスが特に好きで、よくBGMとしてもかけているそうです。

読書とともに味わうコーヒーですが、特にこだわっているのはコーヒー豆の鮮度。元々、鈴木さんはコーヒーを専門に扱われていた方ですから、そこに妥協は一切ありません。一杯ずつペーパードリップでたてられたコーヒーの味は、豆の個性が活かされている大満足の一杯。ドリンクメニューはブレンド、アメリカン、デミタスなど全16種類。ストレートコーヒーは、ブラジル、コロンビア、マンデリン、キリマンジャロの4種類です。コーヒー以外にも、ココアや紅茶もありますのでお好みでどうぞ。ブレンドで700円と神保町では少し高めに感じるかも知れませんが、ご安心を。コーヒーは2杯目から300円という割引価格。ついつい長居してしまう読書利用にこれは嬉しい。混雑するランチタイムをずらした2時以降ならば、コーヒーをお代わりしつつ、ゆったりと読書に没頭できます。

フードメニューにはコーヒーの美味しさを引き立たせる自家製ケーキが2種類。コクのあるベイクド・チーズケーキ、ふんわりシフォンケーキから選べます。ぜひお試しください。2回目以降の来店時にはショップカード持参で、1品に限り全てのメニューが100円引に。老舗喫茶店が数ある神保町の中で、常連のお客さんが多いのも頷けます。

神保町の雑踏を離れた静かな環境の「珈琲舎 蔵」。店主の細やかな気配りが作り出した快適な空間で、時間を忘れてページをめくる。そして、本とともに楽しむ極上の一杯。まさに贅沢な読書タイムをすごすことができるでしょう。1度ゆったりと読書を楽しんだら、きっと次の来店のためにショップカードを手に取っているはずです。
それでは、ぜひ素敵な読書カフェの午後をお過ごしください。次回も神保町のカフェをご紹介しますのでお楽しみに！

「昔からいつか神保町で喫茶店をやりたいと思っていて、丁度いいタイミングで見つけたのがこの場所です。大通りから離れた静かな環境で、ここだと思いました。2階というのも気にいっています。」と鈴木さん。最近お気に入りの本を伺ったところ、小路幸也の「東京バンドワゴン」と「マイ・ブルー・ヘブン」。他にも伊坂幸太郎や荻原浩などの現代作家を好んで読まれているとか。映画が好きで、そこから読まれるようになったそうです。

壁一面に並ぶウェッジウッド社製のコーヒーカップ。開店時から少しずつ集められたコレクション。好みのカップを探してみては。

奥の壁に掛かる絵は鈴木さんのご友人で舟木誠一朗さんの作品。この絵を飾るために、わざわざ壁を改装されたとか。人との繋がりを大切にする鈴木さんの人柄を感じさせるエピソードですね。