男を誘惑するのは罪であるという理由で、髪の毛や肌の露出が禁止されている、イスラムの女性たち。結婚までは処女を守らなければならず、男といっしょに歩くことさえ禁止されている。社会生活の様々な点においても、女性は男性の二の次にされていて、イスラム社会は、明らかな男性優位社会なのだ。
さて、そんななかで、男性の言うことに唯々諾々と従い、女性たちが常に下を向いて暮らしているかというと、そんなことはなく、彼女たちは辛い環境下においても実はたくましく生きている。文学作品がそれを明らかにしてくれるのだ。そして、そんな姿には共感せずにはいられない。
『刺繍-イラン女性が語る恋愛と結婚』はグラフィック・ノベル『ペルセポリス』の作者として有名なマルジャン・サトラピの作品で、歳を重ねるにつれそのしたたかさを増す、イスラム女性のユーモラスな本音が痛快だ。
『柘榴のスープ』は、マーシャ・メヘラーンによる、イラン革命前、国を捨ててアイルランドへたどり着いた美人三姉妹の物語。料理が人と人の心をつなぐ、いわば料理小説のイスラム版。読んでいて気分がじんわり良くなってくるという効能を味わえる一冊。
ヤスミナ・カドラによる『カブールの燕たち』はアフガニスタンが舞台で、今回紹介の三作品のなかで、もっともハードな作品。イスラム原理主義下において、次第に崩壊していく二組の夫婦が描かれる悲劇だ。
今回の特集、レビュワー・三浦天紗子さんによる、女性にゼッタイおすすめの本のシリーズの第2回目となります。