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21世紀の世界文学30冊を読む
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著
都甲幸治
国内
2012.05 版型:単行本 ISBN:4103323213
価格:2,100円(税込)
おすすめ本書評
- 21世紀の世界文学30冊を読む
文芸誌「新潮」連載中の執筆時点で未訳の作品という、著者の設定した条件で選ばれて紹介される30の小説。例外もあるが、作者は主にアメリカで活躍する作家が多い。とはいえ、実際に読んでみると「アメリカ」という枠の中でも、さまざまな出自の人々がいる。国や人種や言語で区別することが難しく、「世界」という言葉の曖昧さを実感させられる。たとえばイーユン・リーは、中国で育ち免疫学を学びに24歳でアメリカに渡ってから、大学で創作に転じた。中国人である登場人物たちの孤独と悲しみの切実さを巧みに描いた彼女の小説は、中国語だと〈自己検閲してしまう〉という理由から、英語で書かれている。チママンダ・ンゴズィ・アディーチェはナイジェリアで生まれ、幼いころはイギリスの児童文学を読んで育った。彼女は、英語で学校教育を受けたために、もう一つの第一言語であるイボ語を使って文章を書くことが出来ない。さらに、英語さえもアメリカ英語やイギリスのものとは違う、ナイジェリア独特の形になっている。19歳でアメリカに渡り大学で創作を学んだ彼女は、そんな特殊な環境で生きる人々の違和感を作品に取り入れ、ナイジェリア人の抱く欧米への劣等感とその歴史や、母国の人間に抱く愛憎を表現する。そんな多様な人々が集まり、作家となって評価される理由を説明した、アメリカの大学事情やアメリカ・イギリスの文学賞の今を教えてくれる著者のコラムも興味深い。
藤井勉
2012/06/11掲載
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