まぶた
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著
小川洋子
新潮社
/新潮文庫
[小説]
国内
2004.11 版型:文庫 ISBN:4101215227
価格:420円(税込)
15歳のわたしは、高級レストランの裏手で出会った中年男と、不釣合いな逢瀬を重ねている。男の部屋でいつも感じる奇妙な視線の持ち主は?―「まぶた」。母のお気に入りの弟は背泳ぎの強化選手だったが、ある日突然左腕が耳に沿って伸ばした格好で固まってしまった―「バックストローク」など、現実と悪夢の間を揺れ動く不思議なリアリティで、読者の心をつかんで離さない8編を収録。
おすすめ本書評
- 『まぶた』小川洋子 / 樋口ヒロユキ
家族の崩壊を描く幻想譚
本書は計8編の短編集で、ほとんどは現代を舞台にした幻想小説ですが、私が一番気に入ったのは『バックストローク』という作品です。ここには懸命に水泳に打ち込む、一人の少年が出てきます。ところがこの少年の家族は、ほとんど崩壊状態にある。本作はこの家庭が崩壊するプロセスを描いた幻想小説です。
父親はふだん画商の真似事のようなことをしていますが、実態的には遺産を切り売りしているだけで、昼日中から酒浸り。父親と母親の関係は冷めきっており、食事を作るのは女中まかせ。家運が傾きつつあるというのに、この家では女中を雇い、家事を任せきりにしているのです――
樋口ヒロユキ
2010/11/24掲載
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