沖で待つ
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著
絲山秋子
文藝春秋
/文春文庫
[小説]
国内
2009.02 版型:文庫 ISBN:4167714027
価格:480円(税込)
仕事のことだったら、そいつのために何だってしてやる。そう思っていた同期の太っちゃんが死んだ。約束を果たすため、私は太っちゃんの部屋にしのびこむ。仕事を通して結ばれた男女の信頼と友情を描く芥川賞受賞作「沖で待つ」に、「勤労感謝の日」、単行本未収録の短篇「みなみのしまのぶんたろう」を併録する。すべての働くひとに。
おすすめ本書評
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私はよく盗聴をしている。盗聴といっても、盗聴器を仕込んで相手の秘密を握ろうとするような犯罪めいたことをするわけではない。街中や飲食店、何かの行事など、人が多く集まる場所において周囲の人々の会話を聞き、その内容を記憶してしまうのだ。自分が会話に参加しているわけでもないのにである。気持ち悪い、悪趣味と思われるかもしれないが、記憶力と聴力がいいために、嫌でも人間盗聴器となってしまうのだ。許してほしい。ただ単に独り身の人見知りで、周りの話を聞く以外することがないだけという説や、そんなことしている暇があるのなら、誰かと話す努力をしろというお叱りの声もあるが、まあ無視しよう。
そんな私が、これまでの盗聴経験の中で発見したことがある。それは、会話の中で最も話が通じやすく盛り上がる話題が何であるかだ。一般的に“仕事”や“恋”などを想像されるかもしれないが、どちらも違う。年齢や経験値によってかみ合わないケースも多く、話したがらない人も多い。正解は“死”についてである。
藤井勉
2011/01/14掲載
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