休刊となった「月刊現代」のこんちくしょう・こうなったら入れたいの全部注ぎ込んで一冊作ってやるぜ気分と、外務省のラスプーチンからいま日本でもっとも多作かつ危険な刑事被告人に転じた(させられた)佐藤優の巨大な腹のなかのマグマが合体したかのような凄い一冊である。『現代プレミア ノンフィクションと教養』、結論を先に書きます。もちろん☆☆☆☆☆ですよ、☆☆☆☆☆。
なにしろ、10人の選者による各100冊の傑作ノンフィクション・セレクションが、やはり圧巻だ。ここまであると数える気もしないが、ダブりも当然あって、計1,000冊ではないのだけど、要するにそれに近い冊数のリスト。なんという広大かつ深淵な世界であることか。
で、誰が選んでいるのかについては、ここで紹介されています。
http://blog.goo.ne.jp/gendai_premier/e/552b99179054407cdfdc6ecfd09c77d7
ご覧いただきましたか。コンテンツも入っていることをご覧いただけたと思います。先週からこのサイトで、各選者のリストもコメント付きで順次リリースされています。
とはいうものの、手もとに長く置いて参考にしたいところなので、やはり紙の本、である。ここで一冊、二冊、書名など紹介したところで、もはやなんの役にも立ちません。だから書かない。1,000冊リストを見て、まず驚愕してください。あれもこれも、まったく知らないのも、とにかくこれでもかの1,000冊ですから。
不満はある。まず1冊ずつのコメントが短すぎて、物足りない。本書中の鼎談にも参加している重松清が「紙媒体の一番の弱点は面積ですよね。スペース的に限界がある。『100冊リスト』でも、もっとコメントを書きたかったんだけど、どうしても入らない」と発言しているが、その重松清のコメントが10人中で最長であり、実はこれならまだいいのだ。他の選者の30~40字あたりではやはり物足りない。
これに関連してもうひとつ。選ばれた本のカバー写真が入っていないのも合点がいかない。誌面のスペース調整用などで入れるのではなく、たとえば各人のベスト20くらいには、ちゃんと入れるべきではなかったか。モノクロの小さい写真であっても、その情報量およびイメージ喚起力は小さくないのに。
以上、(この本、ガイドブックとしての機能が主役のひとつですからね)親切心にはちょっと欠けています(でもそれを補ってあまりある価値はもちろんある。もしかして頁増による価格のことを気にしたのだろうか、現行1,200円で格安どころか激安だと思うが)。
先のサイトのコンテンツにあるように、サイドを固めるノンフィクションやジャーナリズムをめぐる論議も、話し手・書き手・内容とも非常に充実している。全体がとても濃く、出し惜しみなしである。
なかでも、青木理による<メイキング・オブ「死刑執行」>と<控訴を取り下げた死刑囚からの手紙>は、この六月に刊行される書籍のティーザー企画であるということをわかった上で書くが、死刑に関わる人たちのレポートとして、あまりに衝撃的であり慄然とさせられる。日本の新聞のふがいなさは周知のとおりだが、花田紀凱<新聞は「書かないこと」が多すぎる>での、あの宗教団体のタブーへの言及には目から鱗が落ちる思い。
白眉は副島隆彦×佐藤優の対談<『暴走国家』への処方箋>だろう。小沢一郎と中川昭一を追い込んだのは誰か? …ここに書きたくてうずうずしているのだけど、そうもいかない。
話を戻すが、1,000冊のなかで新刊は別としても、複数の選者にとても高く評価されている本が書店にいまもコンスタントに並んでいるかというと、余程の大規模店でないと実は寂しい限りである。絶版も多い。それだけ売れていないということだ。『現代プレミア ノンフィクションと教養』刊行の意義は、とても大きい。もう一回、☆☆☆☆☆!!
とてもおすすめ | ☆☆☆☆☆ |
---|---|
おすすめ | ☆☆☆☆ |
まあまあ | ☆☆☆ |
あまりおすすめできない | ☆☆ |
これは困った | ☆ |