「日本ホラー小説大賞」(角川書店主催)は1994年の第1回からして受賞作がゼロであった。96年の第3回も、またしてもゼロ。そして、06年の第13回、07年の第14回と続けて、大賞受賞作は生まれていない。それが2008年は、これまでで最多の4作品が受賞!! 大賞・真藤順丈『庵堂三兄弟の聖職』、長編賞・飴村行『粘膜人間』、短編賞が2作品・田辺青蛙『生き屏風』と雀野日名子『トンコ』である。まさに大収穫イヤーだ。
「同時代を生きるすべての読者のために、そして、恐怖を通して人間の光と闇を描こうとしている才能あふれる書き手のために設立された」日本ホラー小説大賞…あの貴志祐介や岩井志麻子は第4回、第5回の大賞受賞者だ。これから世に出るであろう新しい作家を作家を探すのも読書の楽しみである(もっとも真藤順丈は『地図男』により、すでに充分世間に認知されているが)。そしてホラー小説といっても、ただ単に奇想天外な怖い話ということではなく、複雑な妙味や確かな文章力があってこそのものであるということを改めて感じさせてくれる4作品でもある。
レビュワーは酒井貞道さんと不来方優亜さんが2作品ずつということでご紹介します。