ミステリー・SF・ホラーファンのハートを捉え続けてきた、ハヤカワ文庫と並ぶ、もう一方の雄、創元推理文庫。その創刊は1959(昭和34)年4月で、2009年4月はちょうど創刊50周年に当たる(ちなみに、記念すべき創刊時の刊行は4作品…ルルー『黄色い部屋の謎』、ミルン『赤い館の秘密』、マクドナルド『凶悪の浜』、ヴァン・ダイン『ベンスン殺人事件』。うち『凶悪の浜』は今回復刊されたが、ほかの3作品は現役のロングセラー)。
創刊以来、読者を新しい世界に案内し、これからも新たな読者を夢中にさせていくであろう創元推理文庫。せっかくの機会なので、今週は同文庫におけるオススメ作品を5日間にわたって紹介するということにした。
まずは米澤穂信による最新ヒット作「小市民シリーズ」。『秋期限定栗きんとん事件』もこの2月に刊行され、まさに人気急上昇中の、いま創元推理文庫でもっともホットなシリーズだ。レビュワーは酒井貞道さん。酒井さんには国内でもうひとつ、泡坂妻夫による「亜愛一郎シリーズ」。この2月に亡くなられた泡坂さんのデビュー短篇「DL2号機事件」を冒頭に収める『亜愛一郎の狼狽』から始まるシリーズで、トボけた味わいの探偵である主役、亜愛一郎の設定の面白さと、手を変え品を変えて繰り出されるトリックの見事さは、いま読んでも十分に新鮮であり、ぜひこの機会に手に取ってみていただきたい作品だ。
海外のミステリー作品は、キャロル・オコンネルの『クリスマスに少女は還る』『氷の天使』の2作品と、R.D.ウィングフィールドによる「フロストシリーズ」。コアなミステリーマニアに評判の高いキャロル・オコンネルは、「キャシー・マロリー シリーズ」の第一作目と人気の単独作品をセットで川出正樹さんが紹介。えげつないキャラクターの魅力でぐいぐい読ませる「フロストシリーズ」は編集部のフロスト狂・田所次郎の担当。
さらに創元推理文庫といえばSFも見逃せない(本当はホラーもそうなのだが、それだと1週間で終わらないので…)。大城譲司さんが紹介--「創元SF文庫文庫で読む戦後海外SF史」。バラード『結晶世界』、ホーガン『星を継ぐもの』、ビジョルド『戦士志願』、イーガン『宇宙消失』に、バラードのこの3月の最新文庫『楽園への疾走』も含めて、60年代から90年代を一気にたどるレビューだ。