池澤夏樹個人編集による「世界文学全集」(河出書房新社)を読むシリーズの第5回目。今回はロシア編。
『不思議の国のアリス』のようにナンセンスで、『ロッキーホラーショー』のように狂躁的で、しかも『魔女の宅急便』のように愛と希望に満ちた作品である、20世紀ロシア文学最大のメガヒット、ミハイル・ブルガーコフの『巨匠とマルガリータ』が主役だ。
さらにプラスする作品は、ヴィクトル・ペレーヴィンの『チャパーエフと空虚』、レオニード・ツィプキンの『バーデン・バーデンの夏』。いま、光文社・古典新訳文庫『カラマーゾフの兄弟』の大ヒットをきっかけに、時ならぬロシア文学ブームとなっているが、せっかくだから、最新の傑作を知りたいと、ここは、20世紀のロシア現代文学でまとめてみた。
前者は、ロシア文学といえば群像社から刊行の、悪夢的で、シュルレアルで、ユーモラスで、とっぴょうしもない、ポストモダニズム作品。後者は、質の高いラインナップで定評のある新潮クレスト・ブックスからのドストエフスキーをテーマにした作品であり、この5月に刊行されたばかりの話題の本だ。そう、ドストエフスキーマニアであれば読まずにはおれない作品、です。
日本人は明治以降、なぜかずっとロシア文学好き。さて、その20世紀の最新作品は? レビュワーはおなじみ朱雀正道さん。今回もまた、原稿たっぷりでお届けします。