来年の大河ドラマとして話題の『天地人』は、上杉家執政である直江兼続が主役の武人の世界を描く物語。その原作者、火坂雅志の描く世界はその武人に留まらず、数寄者、芸術家、職人、さらには忍者と幅広い範囲に渡っています。それらの絢爛でいて多彩な世界を楽しむには、短篇集がうってつけ。…というわけで、今回の特集ではオススメの3冊をご紹介。それらは、テーマこそは異なるものの、火坂雅志ならではの特徴である一本筋が通ったこだわり・美意識が魅力の作品群でもあります。
『利休椿』は、千利休をはじめとする美の変革者たちの、壮絶な生きざまを描いた、珠玉の短篇集。まさに美は桃山にあり!!
『軒猿の月』は、戦国時代の忍者集団や剣豪・塚原ト伝が登場する幻想的で、少々風変わりな作品集。
『桂籠とその他の短篇』は、表題作は異色の忠臣蔵の一篇であり、武人の「義」と「勇」と「美」を見据えた秀作集です。
エンターテイメント精神にあふれた、歴史・時代作家である火坂雅志の世界へようこそ。ご案内は、数寄者レビュワー・濱田哲二さんです。