「とりあえずの」順位ですが、本当はそこに差なんてありません。スタイリストとしても、書き手としても岡尾美代子さんのファンなのです。『おやすみ モーフィ』のモチーフは毛布。毛布だからモーフィ。いつもながらの旅の視線がステキです。『長い終わりが始まる』では、小笠原、という主人公がとても好き。なぜそんなにイイんだろう? 考えてもよくわからないのです。厄介な性格なのに。この「わからなさ」を大切にしたいです。世に「小津本」は数あれど、『小津ごのみ』はどれにも似ていません。対象を「目に見えるもの」に限定しつつ、記号的な読解ではなく、オリジナルの思考になっているのが見事。『限界集落ーMarginal Village』は僧侶にして写真家。その眼と耳と足が紡ぎ出すフォト+エッセイです。この本が差し出す厳しい現実が、しかしある種「幸福な」読後感として残るのは、あるいは罪深いことなのかもしれません。『死刑』存置派か廃止派か? もちろん、著者は中立なんかではありません。しかし自説の正当性より、相容れない他者のあいだをさまようことに時間を費やす、そのダッチロールの生々しさ。森達也さんの最高傑作だと思います。